
Google アナリティクス導入時の66項目のチェックリスト(1)
<導入と諸設定>
Google アナリティクスであろうとなかろうとアクセス解析を始めるにあたっては、きちんと設計してからトラッキングコードの実装や各種準備をするに越したことはありません。Google アナリティクスをはじめとするJavaScript計測タグ型のアクセス解析においては、過去に遡ってデータを取得し直したりすることができないからです。
本稿では「Google アナリティクス導入時の66のチェックリスト」の前編で、Google アナリティクスに際してどのように考えて導入を進めていくべきかを解説しています。後編では、これらを66のチェックリストとしてまとめました。
●計測開始にあたっての大前提
ウェブサイトの利用行動の計測を開始する前に、次のことを整理しておいて下さい。
- 該当ウェブサイトの目的
- 該当ウェブサイトの成功の定義と係数評価軸
- 係数評価のために具体的にどのような集計データ群が必要か
●集計データを左右する2大要因
最終的に出力されるデータは、設計次第で変わってきます。数字が異なってくる要因としては、大きく分けて次の二つです。
A.何を収集するのか
B.どう集計するのか
大元のデータが異なれば、数字は異なってきます。これがAに起因する要因です。集計の仕方を変えれば、数字は異なってきます。これがBに起因する要因です。
A.何を収集するのかについての考え方
まず「A.何を収集するのか」について具体的に説明していきましょう。まず大きく二つに分類して考えます。
A1. 計測対象サイトの範囲を決める
A2. 計測したい項目を洗い出す
そして具体的には、上記に対応したカスタマイズを施した計測タグや各種パラメータを実装するという行為に落とし込みます。
A1. 計測対象サイトの範囲を決める
それでは、A1を具体的に説明していきます。企業や個人など、Google アナリティクスで計測しようと考える対象範囲は様々なパターンがあります。「www.example.com」という1ドメインだけを計測するようなシンプルなケースだけではないわけです。
- 複数ドメインをまとめて計測したい (企業サイトとブランドサイトが別ドメインで存在し、まとめてみたい場合など)
- 複数サブドメインをまとめて計測したい(複数のブランドサイトを別サブドメインにしている場合など)
- 一部のディレクトリだけを計測したい(ブログサービスに間借りして、一つのディレクトリだけを使用している場合など)
そして、これらの組み合わせも考えられます。
A2. 計測したい項目を洗い出す
標準で収集するデータは次の記事を参考にして頂きたいのですが、各種カスタマイズをすること可能です。「Google アナリティクスが取得するデータ」
まずは何が収集できるのかという技術的ところからではなく、こんなデータが取れるといいなあと思うものを全てピックアップしてみてください。その上で、取得できるのかどうかを識者に確認してみるというアプローチがよいでしょう。もちろん導入時には標準で何が収集、集計されているかを理解していないと思うので、ピックアップしたその中には標準で計測、集計できているものがあっても構いません。
下記に具体例を列挙してみました。標準で収集、集計しているものは省いています。トラッキングコードなどのカスタマイズによって追加で取得可能なデータです。
- PDF(WMVなどhtmlファイル以外の)ファイルのダウンロード(クリック)回数
- 外部リンクのクリック数
- フラッシュ コンテンツでのマウスオーバーなどの各種ユーザーのインタラクティブな行為
- 入力フォームでどの項目まで入力をしたか
- 会員/非会員の行動の区別
- カートなどで同じURLが続く場合の各ステップの区別
- 同一ページに複数ある同じリンク先の場所別のクリック数
- メルマガに記載しているURLからの流入回数
- 参照元からは区別できない広告流入の判別
- Eコマースの購入商品や売上金額データ
<データ収集時のカスタマイズ>
上記の「計測対象サイト」「計測したい項目」に応じたカスタマイズを施したトラッキングコードのカスタマイズや各種パラメータを実装することになります。下記はGoogle アナリティクスの言葉になりますが、上の5つがトラッキングコードのカスタマイズの種類を示しています。最後の1つはランディングページのURLにパラメータを付与するカスタマイズになります。個々のカスタマイズに関してはここでは触れませんが、別稿でそれぞれについては解説する予定です。
- 仮想ページビュー
- イベントトラッキング
- ユーザ定義/カスタム変数
- eコマースタグ
- 標準外の検索エンジンの登録
- 広告トラッキング用パラメータ
B.どう集計するのかについての考え方
次に「B.どう集計するのか」について具体的に説明していきましょう。こちらもまず大きく二つに分類して考えます。
B1. データに対して加工を行う
B2. 標準で表示しない機能を活用する
そして具体的には、上記に対応したカスタマイズを施した「プロファイル」を作成するという行為に落とし込みます。
B1. データに対して加工を行う
ここでは様々なデータ加工のためのフィルターについて説明します。各プロファイルに対しては、随時セグメントで絞る機能がありますが、固定的に加工を施しておくための処理であるが「フィルター」です。カスタマイズの自由度の高い加工ができるので、網羅的にその機能を説明することはここではしませんが、どのような加工ができるのかを列挙しておきます。。
- /と/index.htmlが併存する場合に、レポート上で表記を統一してまとめる
- URLに付いているパラメータを削除する(例えばセッションIDなど、ページの内容に直接関係ないパラメータ)
- 特定のIPアドレスからのアクセスを除く
- 特定のディレクトリだけに絞り込む
- その他各種条件に一致した(一致しない)ものに絞り込む
- URL群を纏めて表記するようにURLに加工を施す
- 個々のURLの表記を変えるような加工を施す
- その他のフィルター(データ加工)機能を利用する
B2. 標準では有効でない機能を活用する
ここでは各プロファイルで設定可能な機能を列挙しておきます。個々についての詳細は別稿でそれぞれ解説します。
- 目標設定の指定(資料請求完了ページ、購入完了ページなどのコンバージョンを指定する)
- 目標到達プロセスの指定(コンバージョンまでに通過すべきページを指定する)
- eコマースの機能を有効にする(eコマースのトラッキングコードを使用していなくても有効にできる)
- AdWords費用データの取り込み
- サイト内検索機能を有効にする(サイト内検索の機能を実装していなくてもパラメータを使っていれば利用できる)
●最後の仕上げ
C.Google アナリティクスのアカウント、ウェブ プロパティ、プロファイルを理解する
D.制限事項を理解する
E.管理者と閲覧者の権限設計まで考えて最終的な構造を決定する
C.Google アナリティクスのアカウント、ウェブ プロパティ、プロファイルを理解する
既にプロファイルという言葉を使っていますが、ここでGoogle アナリティクスのアカウント、ウェブ プロパティ、プロファイルの3つのレイヤについて理解しておくとよいでしょう。詳細は下記の二つの記事を読んで頂きたいと思います。
Google アナリティクスのアカウントの設計方法(1)
Google アナリティクスのアカウントの設計方法(2)
ここでポイントになるのは次の二つです。
- 「ウェブ プロパティ」は計測するドメインなどの収集データ群の単位で、つまり「A.何を収集しているのか」に対応します
- 「プロファイル」はレポートを見る一つ一つの単位です。ウェブプロパティ単位の収集データに対して、フィルタを掛けて(加工を加えて)集計されたもので、つまり「B.どう集計するのか」に対応するのが「フィルター」です
D.制限事項を理解する
その上で、このアカウント、ウェブ プロパティ、プロファイルに関する制限事項を理解しておくことで、後悔しない設計図を作ることができるようになります。
<Google アナリティクスのアカウント全体に掛かる制限>
- 配下に作成できるプロファイルの総数は50個まで
- 配下の全てのプロファイル全体で、月間計測ページビュー数の上限が500万(AdWordsのアカウントとリンクしていれば適用されない)
<ウェブ プロパティに掛かる制限>
- 利用できるカスタム変数は5つ
<各プロファイルに掛かる制限>
- 集計表示できるURLやキーワードが5万件まで(5万件以上あるとそれらはまとめて(other)で一括りにされる)
- 目標設定は最大20個まで
- 目標到達プロセスは各目標に対して20URLまで
E.管理者と閲覧者の権限
閲覧ユーザーについてはプロファイル単位で閲覧を管理できますが、一つのGoogle アナリティクスのアカウントに対して、一人以上の管理者が必要で、その管理者はアカウント配下の全てのプロファイルの閲覧権限を有することになります。
事業者の大規模サイトの扱う場合、誰が管理者となってその範囲はどの程度が適切か、外部の代理店や制作会社がどの範囲でサイトに関与しているのか、社内の複数の部門に対してそれぞれデータを見せる範囲はどのようにあるべきかといったことまで考慮にいれる必要があります。
●まとめ
A.何を収集するのか
B.どう集計するのか
C.Google アナリティクスのアカウント、ウェブ プロパティ、プロファイルを理解する
D.制限事項を理解する
E.管理者と閲覧者の権限設計まで考えて最終的な構造を決定する
という流れで解説してきました。
小さいサイトで、2-3人しか関与していないウェブサイトの計測であれば、それほどしっかり考えてから始めなくても問題ないと思いますが、大規模サイトで関与する人間も多数の場合は、最初の設計が重要になるでしょう。データの大本をカスタマイズするA、集計をカスタマイズするB、レポートの構造や制限事項・閲覧権限といった仕組み全体C~Eを理解して、Google アナリティクス全体の設計をして頂くのがベストな導入プロセスです。
具体的な66項目のチェックリストは後編をご覧下さい。


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